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【会社概要・後編】次の100年を創るHelteの現在・過去・未来
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【会社概要・後編】次の100年を創るHelteの現在・過去・未来

世話カツ編集部
世話カツ編集部(Helte) 公式

2026年10月09日


株式会社Helteは、日本のシニア層が世界の日本ファンと日本語で交流する「Sail」のプラットフォームを中心に事業を展開しています。Sailを核とした自治体や大学、他企業との取り組みにより、社会課題を解決する多くの事業が生まれてきました。
「分断のない活力のある社会を創る」をミッションとするHelteがどのように誕生したのか、そして未来に向かってどのように成長していこうとしているのか、株式会社Helteの代表である後藤 学に話を聞きました。


良い社会を創りたいという想いで仲間・協力者を集めた


6. 旅を通して価値観が大きく変わったことで、起業への思いが芽生えたのでしょうか。

実は、海外を周り終えた時点では起業を考えていたわけではありません。当時はNTTへの内定が決まっており、「安定した会社で着実にキャリアを積みたい」という気持ちのほうが強かったですね。


ところが、入社からわずか1年で退職を決意しました。社会人として働くなかで、自分が本当にやりたいことが次第に整理され、進むべき道がはっきりと見えてきたからです。


NTTではERPシステムの導入に携わっていました。私の頭の中には、たとえばそのシステムが東南アジアの工場に導入されることで、生産性が上がり、現地の労働者の所得が向上し、その結果として子どもたちが学校に通えるようになり、地域や国の発展につながる——そんな構想がありました。でも、実際にそのビジョンを実現しようとすると、あまりにも道のりが遠すぎると感じたんです。


もっと身近で、もっと即効性のある形で世界の誰かの幸せに貢献できる方法があるのではないか。そう考えたとき、「自分で起業する」という選択肢が自然と浮かんできました。小さな一歩でも、自分の手で誰かの未来を変える取り組みができるかもしれない——そう思ったことが、起業を決意した原点です。


7. 1人でも多くの人を幸せにするために会社を作るしかない、と。

正直、そんな崇高な考えではなかったと思います。不安はありましたが、それ以上にワクワクする気持ちに突き動かされて、ただひたすら走り出した——そんな感覚が近いですね。とにかく、社会の中で固定化してしまっている価値観を壊したかったんです。


私は決して強い人間ではありません。それでも、小さな力であっても大きな力に立ち向かえるようになりたい。そんな自分に変わりたい。そして、少しでも社会を変えたい——その思いが原動力でした。




8. 社会課題を解決する事業にもさまざまな切り口があります。その中で、Sailという構想にはどのようにたどり着いたのでしょうか。

高齢化の課題に取り組むことは、起業を決めた時から心に決めていました。それは学生時代のある体験がきっかけです。NTTに内定した際、海外事業を展開する部署に配属される可能性があると聞き、英語力を磨こうと思いました。そこで母の知人の紹介で、フロリダ州に住む高齢の女性とオンラインで会話を始めたんです。


会話の内容は日常的で他愛のないものでしたが、ある時、その女性が語ってくれたのは、公民権運動をきっかけに黒人への思いがどのように変わったのかという個人的な経験でした。異なる世代、異なる環境の人から直接聞くその話は、私にとって非常に特別な価値がありました。


「もし、私が英語でフロリダの女性と語り合ったように、日本語を学ぶ外国人が、豊かな経験を持つ日本のシニアと話せたら——」
その時ふと、単なる語学学習にとどまらず、文化や価値観も深く学べる交流の場になるのではないかと考えたのです。これが、Sail構想の原点でした。




9. 国際交流といえば英語が中心ですが、日本語を軸にするという発想が新鮮です。

日本人が日本語を話すことは、特別なスキルではありません。誰もが当たり前に持っている能力で、誰かを喜ばせられる——そこに価値を見いだしたかったんです。自分らしく、あるがままに生きているだけで、誰かの役に立ち、喜びを与えられる。そんな体験を多くの人にしてもらいたいと思いました。





10. あえて日本語を使うのは、海外の人に言語を合わせ続けてきた日本人が、自らのアイデンティティを取り戻すためかと思いましたが……。

実は、そうした思いも確かにあります。私たちは「日本語でのグローバルコミュニケーション」を掲げており、日本語を“世界に開かれたコンテンツ”として再定義したいという想いが根底にあります。
「英語ができないと世界とつながれない」という前提を覆したいんです。だからこそ、「つたなくてもいいから日本語で話してみようよ」「日本語でも心は通じるよ」と、外国人の皆さんに伝えたい。それが、Sailのメッセージです。





11. Helteが設立された当時は、高齢化も今ほど深刻には捉えられておらず、SDGsの認知も進んでいなかったかと思います。Sailで収益化の見通しはあったのでしょうか。

正直、当初はマネタイズの手応えなんてまったくありませんでした。 企業連携も自治体との協定も、人材紹介事業も、全部あとから出てきたもので、当時は構想すらありませんでした。
ただ、「これは社会にとって良いはずだ」という純粋な信念だけを握りしめて、一本足打法で飛び込んでいった感じです。


とはいえ、少子高齢化の流れは確実に進むし、東京オリンピックの開催も決まっていたので、訪日外国人が増えることは見えていました。だから、「Helteの事業価値が時代に追いつくタイミングがきっと来る」と、自分を鼓舞しながら走っていました。





12. 社会性の高い取り組みであれば、非営利法人という選択肢もあったかと思います。あえて営利法人を選んだ理由は?

起業当初から支えてくれて、今は取締役にもなっているフランス人のクロード・リエスと、この点はかなり話し合いました。彼は「海外ではNGOでも年収1000万円以上を得る人が普通にいる。だから経済性で営利・非営利を分けるのは本質じゃない」と言ってくれました。


でも私としては、事業をスケールさせることに強くこだわりたかった。 ビジネスとして拡大していけば、より大きな社会的インパクトを生み出せる。そして、Helteという船に、多くの投資家や企業を“株主”として乗せて、皆で漕ぎ出していく。 そんな構造を最初から描いていました。


13. とはいえ、資金調達にはかなり苦労されたのでは?

実は、会社設立の目処も立たないまま、勢いでNTTを辞めてしまったんです。 そこから1年間は準備に専念しましたが、当然その間に貯金は尽きてしまいました。でも、クロードが私のビジョンに共感してくれて、個人として出資してくれたおかげで、ようやく起業にこぎつけることができました。


もちろんその後も、資金が尽きてクレジットカードが止まったこともあります。でも、「もうダメだ」と思ったタイミングで、なぜか不思議と、助けてくれる人が現れるんです。


「分断のない活力ある社会を創る」なんて、青臭い理想に聞こえるかもしれません。でも、この理念を言い続けてきたからこそ、純粋に共感し、応援してくれる人がHelteのボートに乗ってくれた。 そう確信しています。



コミュニケーション基盤として着実に成長


14. 参加者を増やすのは簡単ではないと思いますが、プラットフォーム拡大のためにどのような施策を講じていますか。

日本人ユーザーについては、自治体やシニア向けの顧客基盤を持つ企業と連携しながら拡大しています。以前、Sailの会話データをAIで解析することで、軽度認知障害(MCI)の早期兆候を検知できることが分かったという話をしましたが、最近では医薬品開発支援企業のイーピーエスと提携し、早期介入による予防・治療の取り組みも始めています。


現在、日本人ユーザーの利用料は原則無料ですが、今後はヘルスケアと連動した有料サービスの展開も視野に入れています。また、阪急阪神ホールディングスとも提携し、沿線に住むシニア層にSailを活用していただく取り組みも進行中です。将来的には、Sailを通じたシニア向けのサービスをさらに充実させていきたいと考えています。


加えて、自治体との連携も大きな柱です。私たちのような小さな会社がいきなり信頼を得るのは難しいのですが、自治体広報誌への掲載や、市民団体との接点づくりなど地道な取り組みを通じて、ユーザー獲得を実現しています。また、コミュニティ運営やメディア露出、広告展開といったマーケティング施策も並行して行っています。


海外ユーザーの拡大については、現地の大学や語学学校への導入提案、さらにはイベント開催など、教育機関との接点づくりを中心に進めています。





15. 国際交流で日本語を軸とするという発想はユニークですが、一方で市場規模が限定的ではないかと感じる人もいるかもしれません。市場の成長性についてはどのように考えていますか。

実は、日本語学習者という視点で見れば、市場は非常に大きいんです。現在、日本国内には約300万人の在留外国人がいますし、海外の公的機関で日本語を学んでいる人は400万人、卒業生を含めれば2,000万人にものぼります。


さらに、日本のポップカルチャー人気の高まりにより、グローバル展開している語学アプリ「Duolingo」では、日本語学習者の数が世界で3位にランクインしています。
私たちのようなスタートアップが事業をスケールするには十分な市場規模があると確信しています。


実際、コロナ禍ではSailのアクティブユーザー数が急増しました。現在までに交わされた会話数は累計40万回を超えますが、そのうちの半分は直近2年間で生まれたものです。国内では自治体や企業との連携も拡大しており、プラットフォームとして着実に成長を遂げています。




16. 日本では高齢化社会への対応というテーマがありますが、グローバルな観点ではSailはどのような役割を果たすと考えていますか。

今の時代、インターネットを通じて世界中の人々とつながれる一方で、分断も深まっています。自分と似た価値観の人とは共感しやすいけれど、異なる価値観を持つ人に対しては排他的になる傾向が強まっているのではないでしょうか。SNSなどでも“共感のバブル”が生まれ、対話が断絶されがちです。


そんな中でも、「日本が好き」「日本語を学びたい」と願う人たちは、国や文化の違いを超えて存在しています。であれば、日本という共通の軸を通じて、多様な価値観を持つ人々をつなげることができるのではないか。Sailにはその可能性があると考えています。


例えば、生まれ育った国で希望が持てなかった人が、日本で働くことによって人生が大きく変わるケースもあります。インドのようにカースト制度の影響が根強い国でも、ITスキルを武器に世界へ羽ばたいて豊かな暮らしを手にする人もいる。日本がそうした“セーフティネット”や“成長の舞台”になる可能性は十分にあると感じています。


また、Sailに参加する日本のシニア層からは、「外国人労働者に偏見があったが、Sailを通じて考えが変わった」「最近は工事現場やコンビニで働く外国人に話しかけるようになった」といった声も数多く寄せられています。


私たちが提供するSailというプラットフォームが、日本と世界を結ぶ架け橋となり、多様な価値観を持つ人々の相互理解を促進する。それによって、今ある分断を少しずつでも解消していけると信じています。




あるがままに生きて社会の役に立つ。そんな実感ができるインフラを作りたい。


17. 今後、Sailをどのように育てていきたいと考えていますか。

人は誰でも、ただ“普通に生きているだけ”で、誰かの役に立っています。それをもっと可視化したいんです。そして、Sailを通じて、自己肯定感が高まるような、誰もが安心して参加できる「優しい社会のインフラ」をつくっていきたいと考えています。


たとえば、日本のシニア層が外国人と会話をすることで、自然と脳が活性化し、健康寿命の延伸にもつながるかもしれない。あるいは、外国人との交流によって新たな生きがいや喜びを感じることができるかもしれません。自分の経験や知識、言葉を誰かに分け与えることで、めぐりめぐって自分にも幸せが返ってくる——そういった循環を、Sailの中で実感してもらえたら嬉しいです。


実際、東京大学や奈良女子大学と進めている共同研究では、Sailの利用によって孤独感や孤立感が軽減され、ストレスが緩和されたという結果も見えてきています。
こうした変化は、医療費や介護費の増加といった日本社会の課題にもポジティブな影響を与えるはずです。


また、日本のシニアが持つ知見がSailを通じて次世代の外国人に継承され、その外国人が日本社会で活躍していく——そんな循環ができれば、日本にとっても大きな価値になる。高齢化が進む日本だからこそ実現できるモデルだと思っています。




18. Helteの長期的な展望を教えてください。

経済面では、今ある事業の精度を高めながら、2029年の上場を目指しています。一方で、社会的な側面では、私たちの事業がどれほどのインパクトを生んでいるのかを、何らかの指標で可視化していくことにも取り組みたいです。


今、「経済性と社会性の両立」を掲げる“ゼブラ企業”が注目を集めていますが、私たちもまさにそのような存在を目指しています。しっかりと収益をあげながら、社会課題の解決にも本質的に貢献していく。そして、Helteにしかできない、独自性のある事業を着実に育てていきたいです。


事業が成長すればするほど、多くのシニアが元気になり、外国人との交流が広がり、彼らが日本で働き、地域に根を張っていく。その連鎖の先に、地域社会の活性化があり、日本全体のエンパワーメントがあると信じています。
“幸せになる人”を増やしていくこと。それが、私たちの挑戦の根底にある思いです。


19. 最後に、Helteの事業を通じて100年後に残したいものを教えてください。

100年後にも、Sailが“自分らしく生きることが誰かの役に立つ”と感じられるインフラとして、社会に残っていてほしいと思っています。


人の人生には、いろんな選択肢があります。いろんな生き方があります。だからこそ、Sailはそうした多様な生き方を、偏見なく、あるがままに受け入れられる場所でありたい。


どんな人であっても、その人らしい形で、誰かとつながり、貢献できる——そんな社会を支える基盤になれるよう、これからも育てていきたいです。



Helteは、「ありのままに生きることが誰かの役に立つ社会」を本気でつくろうとしています。日本語を軸に、シニアと世界中の人々がつながることで、世代も国境も越えて、人と人との関係があたたかく再構築されていく——そんな未来を信じて、私たちは挑戦を続けています。

分断の時代にこそ、対話が希望になる。Sailというプラットフォームが、やさしさと理解に満ちた社会のインフラとなることを願いながら、これからも一歩ずつ進んでいきます。




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